解像度を上げる|あいまいな思いを、ことばにして、行動に変えていく

言の葉の森は、個を解き放ち、望みを育む森です。

ここでは、ことばを大切にしています。

自分と向き合ったり、目の前の物事について観察したり、考えて行動し、成長し成果を出す。

そんな中で「自分らしくいられるように」「豊かさを分かち合えるように」ということを「言葉」を使って共有したい。

そんなことを考えて、これまでも本の内容を共有することなどにも取り組んできました。

https://kotonoha-mori.com/category/%e6%9c%ac%e3%82%92%e8%aa%ad%e3%82%80

今回取り上げたい本は、馬田隆明さんの『解像度を上げる』です。

正式な書名は、『解像度を上げる――曖昧な思考を明晰にする「深さ・広さ・構造・時間」の4視点と行動法』。

英治出版から2022年11月17日に発売された、352ページの書籍です。

著者の馬田隆明さんは、東京大学FoundXディレクターとして、スタートアップ支援とアントレプレナーシップ教育に関わっておられます。 

もともと、2021年にSpeaker Deckで公開されたスライド『解像度を上げる』があり、その内容が書籍化されたものです。

スライドでは、ビジネスにおける解像度という考え方を、深さ、広さ、構造、時間の4つの軸で整理しています。 

ふわっとしている自分の考えに向き合う

誰かに、

  • 「なんか、お前のいうこと、ふわっとしているよな」
  • 「そんなこと言われても、ピンとこないよ」

と言われたことはないですか?

あるいは、誰かの話を聞いていて、自分の中でそう感じたことがあるかもしれません。

でも、この「解像度が低い状態」は、相手を責めるための言葉ではないと思います。
むしろ、自分の考えを育てていくための大切な入り口なのだと思います。

私たちは、日々いろいろなことを考えています。

  • こんなことをしたい。
  • こんな場をつくりたい。
  • こんな人の力になりたい。
  • 社会の中に、こんな変化を生み出したい。

けれど、その思いがまだぼんやりしていると、行動に移してもなかなか価値になりません。

  • 考えがあいまいなまま動くと、行動もあいまいになります。
  • 行動があいまいだと、相手に届く価値もあいまいになります。

だからこそ、自分の考えをことばにすることが大事になります。

  • ただ思いついたことを話すのではなく、目の前のものごとをよく観察する。
  • なぜそう思うのかを考える。
  • 何が起きているのかを見つめる。
  • どんな関係性があるのかを整理する。
  • これまでどんな流れがあって、これからどう変わっていくのかを考える。

その営みが、解像度を上げることなのだと思います。

解像度を上げる」を読み解いていく

ではここから、私なりの学びと経験をもとに、この本の内容をシェアしていきますね。

解像度を上げる4つの視点

大切にされている視点は、4つあります。

  • 深さ。
  • 広さ。
  • 構造。
  • 時間。

この4つの視点について、本書では詳しく解説されています。

深さという視点。掘り下げる

深さとは、なぜそうなっているのかを掘り下げることです。

  • なぜそう言えるのか。
  • なぜその問題が起きているのか。
  • なぜその人は困っているのか。
  • なぜ今、それが必要なのか。

表面に見えていることだけではなく、その奥にある背景に目を向けていくこと。

広さという視点。幅を持ち物事を見て考える

広さとは、その問題を取り巻く知識や事例を増やすことです。

似たような取り組みはないか。
他の地域ではどうしているのか。
別の分野では、どのように考えられているのか。
自分がまだ知らない視点はないか。

ひとつの思い込みに閉じず、視野を広げていく。

構造という視点。関係性・パターンを見る。

構造とは、ものごとの関係性を見ることです。

誰と誰が関わっているのか。
何が原因で、何が結果なのか。
制度、地域、家庭、仕事、お金、時間、人間関係がどうつながっているのか。

点ではなく、つながりとして見る。

時間という視点。変化や流れを見る。

時間とは、変化や流れを見ることです。

これまで何があったのか。
今どの段階にあるのか。
このまま進むとどうなるのか。
短期的には何が必要で、長期的には何を育てる必要があるのか。

今この瞬間だけでなく、過去と未来の中で考える。

この4つの視点を持つことで、ものごとの見え方はかなり変わってきます。

複雑な問題を解くなら解像度が問われる

ここまで読み進められただけで、「大変だなぁ」と感じることがあるかもしれません。

そこで、一緒に問題を紐解いて、解決策を導くまでのプロセスを辿ってみましょう。

地域の子育て世帯を支える施策を考えてみる

たとえば、地域で子育て世帯を支える施策を考えるとします。

市役所の会議室の中で考えていると、いろいろなアイデアが出てくるかもしれません。

  • ベビーシッターへの補助金。
  • 元気高齢者による保育補助や家事支援。
  • 習い事への助成。
  • 親子イベント。
  • 相談窓口の充実。
  • 地域の居場所づくり。

どれも、悪いアイデアではないかもしれませんね。

本当に支援が必要な人に届けたいからこそ

でも、本当に必要な人に、必要な形で届くのでしょうか。

貴重な税金や地域資源を使うのであれば、なおさら、思いつきだけでは進められません。

そこで、まず深く考える必要があります。

子育て世帯は、何に困っているのか。
なぜ、その困りごとが起きているのか。
それは時間の問題なのか。
お金の問題なのか。
孤立の問題なのか。
制度につながれない問題なのか。
助けてと言えない問題なのか。

このように、問題について、深く掘り下げてみていきます。

ヒアリングすると見えてくることがある?

そこで実際に地域の子育て中の方々にヒアリングをしたとします。

すると、行政の担当者では見えない子育て世帯の実態がリアルに見えてくることがあるでしょう。

親の役割や抱える不安は、世代が変わるとどんどん増えている。

  • 働くこと。
  • 家事をすること。
  • 子どもと向き合うこと。
  • 学校や園とのやりとり。
  • 地域との関係。
  • 家計の管理。
  • 将来への不安。

仕事とは、多くの場合、お金を稼ぐことと直結しています。

  • お金を稼がなければ生活できない。
  • 大人として、親として、ちゃんとしなければならない。
  • そのために時間と力を使う。

もうクタクタで精一杯と感じることがあるかもしれません。

仕事から帰っても休めない現状

でも、家に帰れば家事があります。
片づけても、洗っても、作っても、また次の家事が生まれます。

子どもは、一緒にいたいと言ってくれる。
もちろん、こちらも一緒にいたい。

けれど、少し休みたい。
自分の時間もほしい。
何も考えずに、ほっとしたい。

その本音が、なかなか言葉にならないこともあります。

広く見て、構造を見て、時間の流れを見る

深掘りをしてみていくことができたら次に、広く見ていく必要があります。

  • すでに行政が行っている支援策は何か。
  • 民間のサービスは何があるのか。
  • NPOや地域団体は、どのような取り組みをしているのか。
  • 保育、教育、福祉、医療、地域活動は、どこまでつながっているのか。

これらをみると、深く掘り下げるだけでは見えてこなかったものが見えてくる。

そして、構造を見ます。

  • 支援はあるのに届いていないのか。
  • 情報が届いていないのか。
  • 利用する心理的ハードルが高いのか。
  • 利用条件が合っていないのか。
  • そもそも、困っている人との接点が少ないのか。

このように考えると、単に新しいサービスをつくればよい、という話ではないことが見えてきます。

すでにある制度やサービスを、必要な人に届けること。
地域の人たちとつながりながら、声を聞くこと。
子ども、家庭、学校、地域団体、行政、専門職が、ゆるやかにつながること。

そこに大切な課題があるのではないか、と見えてきます。

さらに、時間の視点も大切です。

今すぐ必要な支援もあります。
一方で、5年後、10年後の地域を見据えて、子どもや子育て世帯を支える基盤を育てることも必要です。

高齢分野では、地域包括ケアのように、一定の圏域の中で支援体制を整えていく考え方が広がってきました。

子育ての分野でも、地域の中で顔の見える関係を育て、必要な支援につながりやすい状態をつくることは、とても大切なのではないかと思います。

そう考えると、子育て支援は、単発のサービスだけではなく、地域の中にコミュニケーションの土壌をつくることでもあります。

さらに、問題だけではなく、環境やプランについても、解像度を高めることで、解決に近づいていくということなんですね。

解像度を上げることはやさしさを具体化すること

私は、この本を読むたびに思います。

解像度を上げることは、やさしさを具体化するために必要なことなのではないかと。

優しい人が潰れてしまわないように

というのも、私は今まで「対人援助職」「まちづくり実践者」など、「誰かのために働きたい」という優しい心の持ち主が、疲弊してしまう状況をたくさんみてきたからです。

  • 誰かの力になりたい。
  • 地域をよくしたい。
  • 子どもたちを支えたい。
  • 自分らしく生きる人を増やしたい。

その思いは、とても大切です。

でも、思いだけでは届かないことがあります。

がむしゃらに頑張るだけでは、成長もできず、成果も出せず、苦しみのみが蓄積していく。

そんなのは嫌だ。

そこで、

  • 本当に困っている人は誰なのか。
  • その人は何に困っているのか。
  • なぜ困っているのか。
  • どこに届いていないのか。
  • 何を変えれば、少し楽になるのか。
  • どんな順番で進めればよいのか。

そこまで見ようとすること。

それが、解像度を上げるということなのだと思います。

言葉を大切にする

言の葉の森は、言葉を大切にしています。

言葉は使い方次第で、人を癒すこともできるし、傷つけることもできる。

言葉を大切にするということは、考えることを大切にするということでもある。

  • 自分の中のあいまいさを、ごまかさずに見つめること。
  • まだ形にならない思いを、少しずつ言葉にしていくこと。
  • その言葉をもとに、誰かと対話し、行動し、また考え直すこと。

そのくり返しの中で、望みは少しずつ育っていくのだと思います。

自分の人生の解像度も上げていく

この本は、起業やビジネスの文脈で語られることが多い本です。

けれど、私にとっては、人生そのものを考える本でもあります。

  • 自分は何を大切にしたいのか。
  • 誰と共に生きたいのか。
  • 何に時間を使いたいのか。
  • どんな価値を生み出したいのか。
  • どんな社会の中で暮らしたいのか。

こうした問いに向き合うこともまた、自分の人生の解像度を上げることなのだと思います。

自分の持っているリソースを把握する。
時間、体力、お金、経験、人とのつながり、言葉、願い。
それらをどう配分していくのかを考える。

そして、人生という時間と空間とプロセスを、少しでも豊かさで満たしていく。

  • 大切な人と共に。
  • 自分自身も置き去りにせずに。
  • 地域や社会とのつながりの中で。

『解像度を上げる』は、そんなことを何度も考えさせてくれる一冊です。

まとめ|解像度を上げる×言の葉の森

ふわっとしている。
ピンとこない。
まだ言葉にならない。

それは、ダメなことではありません。

むしろ、そこから始まるのだと思います。

  • あいまいな思いを、少しずつ見つめる。
  • 言葉にする。
  • 深く考える。
  • 広く学ぶ。
  • 構造を見つける。
  • 時間の流れの中で捉える。
  • そして、小さく行動してみる。

言の葉の森では、そんなふうに、自分の内側にある望みを育てていきたいと思っています。

ことばは、思考の道具であり、対話の道具であり、行動の種です。

その種を、ていねいに育てていくために。

この一冊を、また何度も読み返していきたいと思います。

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