こんにちは。森山です。
私は、豊中で「まちあいの森」という小さな場を開き、その中で、IMA LIBRARYという本を中心にした取り組みも育てています。
そのような中で、
「周囲の期待に応えてきたけれど、自分が本当はどうしたいのか分からない」
このような声を耳にすることがあります。この記事は、そんな感覚を抱えている方に向けて書いています。
私はこれまで、ソーシャルワーク、コーチング、まちづくり、場づくりに携わりながら、家庭や人間関係の再構築を支えてきました。その実践を、システム思考や省察的実践・学習の視点から捉え直してきました。
そこで繰り返し目にしてきたのは、人の主体性は本人の意志だけで決まるものではなく、周囲との関係や環境によって閉ざされもすれば、解き放たれもするということです。
本記事では、こうした実践経験をもとに「主体性を取り戻す」とはどういうことか…。そして、自分の望みを少しずつ育てるために何ができるのかを考えます。
この記事は、次のような方を対象にお届けしています。
- 家族や職場を優先するうちに、自分の望みが分からなくなった方
- 周囲に合わせすぎて、息苦しさや生きづらさを感じている方
- 自分らしく働き、生きる方法を考えたい方
- 家庭や職場の人間関係を見直したい方
- 福祉、教育、対人支援、コーチング、まちづくりに携わっている方
- 人が安心して本音を話し、挑戦できる場をつくりたい方
お伝えするのは、「自分を強く持ちましょう」という精神論ではありません。
主体性を、個人の心だけの問題にせず、人間関係や組織、地域、社会の仕組みを含めて考えていきます。
「主体性を発揮できない」のは意志が弱いからではない

家族の期待に応え、職場で求められる役割を果たし、周囲に迷惑をかけないように生きている。
それなのに、ふと立ち止まったとき、「これは私が選んだ人生なのだろうか」という疑問が湧いてくる。
この感覚は、意志の弱さから生まれるものなのでしょうか?
主体性が気付けば失われている状況に…
私は、そうとは限らないと思うのです。
人は誰もが、家族や職場、地域、社会との関係の中で生きています。相手に合わせることや、環境に適応することが必要な時期もあります。
ただ、周囲の期待に応え続け、自分の感覚や言葉を後回しにしていると、少しずつ人生の手応えが失われていきます。
主体性を取り戻そう。自分らしく今を生きよう。
主体性を取り戻すとは、何でも一人で決めることでも、周囲を振り切って自分を押し通すことでもありません。
自分の内側にある小さな声に気づき、人とのつながりの中で望みを育て、自分なりの選択を重ねていくことです。
主体性を失う背景をソーシャルワークの視点から考える

主体性について考えるとき、私たちはつい「本人にやる気があるか」「自分で決められるか」という個人の問題にしてしまいます。
しかし、ソーシャルワークでは、人を環境から切り離して捉えません。
状況の中の人。環境の中の「私たち」
一人の人の行動には、家族関係、経済状況、職場の文化、地域とのつながり、利用できる制度、社会の価値観など、さまざまな要素が影響しています。
主体性も、その人の内側に固定された能力ではありません。置かれている環境や周囲との関係によって、発揮しやすくも、失いやすくもなります。
「どうしたい?」と聞かれても答えられない理由
自分の意見を否定されてきた人。失敗すると強く責められる環境にいた人。誰かの機嫌を損ねないように、周囲を観察してきた人。
そのような人に突然「あなたはどうしたいの?」と尋ねても、すぐには答えられないことがあります。
希望を言葉にできない人は主体性がないのか?望みがないのか?
「どうしたいの」という質問に即答できないのは、「望みがないから」なのでしょうか。
私はそうではないと思うのです。
自分の望みを感じ、言葉にし、表に出しても大丈夫だと思える経験がもしかすると足りていないのかもしれません。
安心できる環境の上でしか「本音」は出せない
安心して話せる相手がいる。迷いや弱さを否定されない。まだ形になっていない思いを、急いで結論にされずに聴いてもらえる。
そのような環境があって初めて、「挑戦」ができたり、「学び」「仕事」などに取り組めます。
安心できる環境があると、人は自分の感覚を取り戻し始めるのです。
主体性とは自分1人で生きることではなく「関係性を紡ぐこと」

主体性という言葉から捉えるイメージとして、もしかすると
他人に頼らず、自分の責任で力強く決断する姿
を想像する人もいるかもしれません。
でも、私が意図して李うのはそういうことではありません。
私たちは1人では生きていけない
人は他者や社会から完全に独立して生きることはできません。誰かの言葉に影響を受け、ときには支えてもらいながら生きています。
主体性を持って生きるということを考えた時、大切なのは、誰からも影響を受けないことではありません。受け取ったものに対して、自分の感覚や考えをもって応答できることです。
「選ばされた人生」から「選び直せる人生」へ
親から受け継いだ価値観。職場の常識。地域の慣習。「こうあるべき」という社会の言葉。
時にこのようなことが、私たちの「本音」を制限します。
とはいえ、それらをすべて否定する必要はないとも思うのです。
主体性を持って生きることと、自分の考え以外のことを全て否定するのとは違います。
ただ、「私はこれを大切にしたいのか」「今の自分にも必要なのか」と、立ち止まって問い直すこと。
このような時間の流れの中で、自分が大切なものを育んでいくことが大事なのでしょうね。
丁寧に受け止めた上で未来を見据え自分で決断する
過去の出来事や選択を変えられない場合でも、その経験をどう意味づけ、これから何を選ぶかは考え直せます。
主体性を取り戻すとは、誰にも影響されない自分になることではありません。自分が受けている影響に気づき、その中に選び直せる余白をつくることなのです。
コーチングの視点から自分の望みを育てる

では、未来を見据えるということに本気でチャレンジしようとすると、「本当にやりたいことを見つけなければならない」と考えて、かえって動けなくなることがあります。
このように、「ゴールを探すこと」に疲れてしまったり、諦めてしまうことがあります。
でも、そもそもゴールは「探す」とか「見つける」というものというよりは、「仮のゴールを本音に基づいて設定して」「行動しながら更新していくもの」なのです。
周りの目が本音を制限する
例えば、もっとお金が欲しいと思うのであれば、それが本音でしょうし、たくさんの人から信頼されたいと思うのであれば、それも本音です。
ただ、「お金が欲しい」というと、周りからどんな目で見られるかわからない。
そこで、自分の本音に基づいて行動するのを、制限するようになることがあります。
ただ、私たちは「自分が心から望む状態」をゴールとして設定するからこそ、そのゴールの実現に向けて行動する力が湧いてきて、困難も乗り越えられるのです。
ゴール設定をしようとした時、
- 心の奥に隠された唯一の正解を見つけよう
- 周りの誰もに認められるようなゴールを言葉にしよう
そんなふうに思ってはダメです。
自分の本音に基づいてゴールを設定してみて、人と話し、試し、振り返る中で、ゴールを更新しながら、少しずつ輪郭を持っていくものです。
違和感を言葉にすることで曖昧な感覚が形になる
私たちが暮らしを営む中で、問題を抱えてしまったり、頑張っても思うように状況が好転しないことってありますよね。
その時に「ゴール」側から考えてみます。
現状の問題にばかり目を向けるのではなく、常にゴールから自分の役割を考えるようにするのです。
「本当はどうしたいのか」「これが問題だ」を整理する
コーチングを実践してから、それほど時間が経たない頃は「何となく違和感があるなぁ」「こんな感じでいいのかなぁ」という感覚だけかもしれません。
その感覚を否定せず、丁寧に見つめていきます。「本当はどうしたいのか」「何が問題なのか」ということに向き合うのです。
「本当は安心して意見を言いたい」「誰かの役に立ちながら、自分の生活も大切にしたい」といった願いが見えてきた時、「自分の中の主体性が失われていること」に気づけるはずです。
コーチとしての経験からクライエントの主体性を考える
コーチングにおける対話は、外から正解を与えるためのものではありません。問いを通して、その人自身が感じ、考え、自分の言葉を見つけていく営みです。
言葉は、すでに完成した考えを伝えるためだけの道具ではありません。自分でもまだ分からない思いを見つけ、育てるためのツールでもあります。
だから「言の葉の森」では、うまく説明できない感覚や、矛盾した気持ちも大切にします。
結論を急がず、言葉の芽が出るのを待つ。その時間が、個を解き放ち、望みを育むことにつながるからです。
主体性を取り戻すための3つの実践

主体性は、一度の大きな決断によって取り戻すものではありません。日常の小さな実践を重ねることで育っていきます。
1.自分の反応を観察する
まずは正しい答えを出そうとせず、自分の反応に気づいてみます。
何をしているときに心が緩むのか。どのような場面で息苦しくなるのか。誰といるときに自然に話せるのか。
感情や身体の反応は、自分と環境との間で起きていることを知らせる大切な手がかりです。
「嫌だと感じてはいけない」「感謝しなければならない」と評価する前に、今起きている反応をそのまま観察してみましょう。
2.問題を関係や仕組みから捉え直す
うまくいかないとき、すべてを自分の性格や努力不足のせいにしないことも重要です。
意見を言えない背景には、過去の人間関係、家庭内の役割、職場の権力関係、失敗を許さない文化などが影響しているかもしれません。
様々な関係性によって問題が生じているんだという視点を持つと、「誰が悪いのか」ではなく、「どのような関係や構造が、この状況を生み出しているのか」と考えられます。
自分と相手を含む関係全体を眺めることで、自分を責める以外の選択肢が見えてきます。
3.小さく行動し省察する
考えが完全にまとまるまで待つのではなく、安全な範囲で小さく試してみます。
頼まれごとにすぐ返事をせず、少し考える。信頼できる人に本音を一つ話す。興味のある場所を訪ねる。
そして、「何が起きたか」「自分はどう感じたか」「次は何を変えたいか」を振り返ります。
省察的実践では、行動を成功か失敗かだけで判断しません。経験を振り返り、そこから得た気づきを次の行動につなげます。
主体性とは、最初から正しく選ぶ力ではなく、経験から学びながら選び続ける力でもあるのです。
主体性は安心できる人間関係と場の中で育つ

人が変わるためには、厳しさや正論よりも先に、安心できる場が必要なことがあります。
弱さを見せても関係が壊れない。分からないと言ってもいい。途中で考えが変わってもいい。挑戦して失敗しても、その場に居続けられる。
そのような場では、人は誰かに答えを与えてもらうのではなく、自分の言葉と選択を取り戻していきます。
そして、安心できる場で大切にされた人は、他者の言葉も大切にできるようになります。自分の望みを育てた経験が、誰かの望みを支える力へと変わっていきます。
一人の主体性が回復することは、その人だけの変化ではありません。
家庭での関わり方を変え、職場の対話を変え、地域に新しいつながりを生み出します。個人への支援と、よりよい場やまちをつくることは、つながっていると考えることが大事ですね。
「まちあいの森」で共に「問い」「育てる」

主体性を取り戻す道のりには、すぐに答えが出ない問いがあります。
自分は何を大切にしたいのか。誰と、どのような関係を築きたいのか。仕事や家庭、地域の中で、どんな役割を引き受けたいのか。
こうした問いは、一人で考えるだけでなく、安心できる人たちと言葉を交わすことで深まります。
「まちあいの森」は、完成した答えを教わる場所ではありません。
ソーシャルワーク、コーチング、まちづくり、場づくり、システム思考、省察的実践といった視点を手がかりに、それぞれが自分の言葉を持ち寄り、聴き合いながら、次の一歩を育てていく会員のための場です。
まだ望みをうまく説明できなくてもかまいません。弱さや迷いを抱えたままでも参加できます。
一人では見えなかったものを、誰かとの対話の中で見つけたい。自分らしい生き方や実践を、急がず育てていきたい。
そう感じたときは、どうぞ「まちあいの森」を訪ねてみてください。
主体性を取り戻すことは、強い自分になることではありません。
自分の感覚に耳を澄まし、置かれた環境を見つめ、人とのつながりの中で、自分の望みを育て直すことです。
あなたの中にある、まだ言葉になっていない思いも、これからの生き方をつくる大切な一枚の葉なのだと思います。
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